殷商の人身御供制度

頭を切られて殉葬された奴隷
殷王朝といえば、周の武王に亡ぼされた紂王が、妲己に惑わされて残虐に人を殺し、人肉を食べることもあった事が知られている。
これは、紂王に限ったことではなく、殷の前身である商王朝からの伝統でもあり、甲骨文にはしばしば人身御供の記事が出てくる。
甲骨文に出てくる人身御供の記事は1350件、卜辞は1992条に及び、一度に千の牛と千の人を捧げたとの記事も見つかっている。
また、商王朝の王墓を発掘すると、王の棺の周囲から生前に仕えていた者と思われる奴隷が、殉葬されていることが多いという。
人身御供にされたのは、商朝の敵であった羌族で、武王と共に殷を滅ぼした太公望は姜子牙とも呼ばれるが、羌族であったらしい。
孔子が「怪力乱神を語らず」と述べたのは、殷商で鬼神に捧げられた、人身御供の忌まわしい記憶が残っていたためかもしれない。
野崎晃市(46)