帝王のプロポーズを拒否した女性たち

始皇帝を批判した孟姜女
帝王のプロポーズを断るのは、田舎の農夫が「帝王、我において何事かあらんや」と嘯くのよりも難しい。帝王の誘いを断ることは、しばしば即座に命を失うことを意味したからである。しかし、そうした反骨精神と勇気に満ちた女性たちが過去にいたことは覚えておいてもよい。
1、 孟姜女(中国の伝説)
中国の秦の始皇帝の時代に、孟姜女の夫は新婚三日目で始皇帝の命令により万里の長城の建築労働に駆り出された。夫は不幸にも過労で死んでしまい、万里の長城の壁に埋められた。
孟姜女が夫を探してはるばる万里の長城まで来て泣いていると、万里の長城が崩れて夫の遺体が出てきた。始皇帝は万里の長城が崩れたと聞いて、孟姜女を捕まえさせた。
しかし、孟姜女が美人だったので始皇帝は自分の宮女となるよう命令した。ところが孟姜女は始皇帝を暴君と罵りながら海の中に飛び込んで自殺し、始皇帝の誘いを拒絶し亡き夫への貞節を守る。
2、 かぐや姫(日本の昔話)
竹から生まれたかぐや姫は美しく育ち、三人の貴族が結婚を申し込んでくる。ところが、かぐや姫は三人の貴族に無理な注文を出して、結婚の申し出を婉曲に断る。最後はミカドからも結婚を申し込まれ無理やり関係を迫られるが、それをすり抜けて月の世界にもどってしまう。
3、 シュラミの娘(旧約聖書の雅歌に登場するミュージカル風物語)
シュラミの娘はソロモン王の隊列を道端で見ているところを王に見初められ、王宮に拉致されて栄華を誇るソロモン王から口説かれる。
しかし、彼女には既に結婚を約束している羊飼いがおり、王のプロポーズを拒絶して身柄を解放するように要求する。
ソロモン王は娘の美しさや可愛らしさをほめそやして、娘の機嫌を取ろうとする。ところが、シュラミの娘は羊飼いと自分の愛情について歌い始め、ソロモン王を興ざめさせる。
ソロモン王は手をかえて、宮殿の華麗さや黄金の手環など金銀財宝を持ち出して娘を口説き始める。ところが、シュラミの娘は羊飼いの恋人と横たわる草原から見上げる星空は宮殿の金銀財宝に勝ると答える。
また娘は王宮に金の鎖でつながれるより、草原を恋人と自由に走り回りたいと歌い上げる。王は娘の機転の利いた回答に感心して、娘の身柄を解放して家に帰す。
野崎晃市(42)