『雅歌』はオペラ歌劇の台本
パレストリーナ作曲『ソロモンの雅歌』
旧約聖書に『雅歌』という恋愛歌を集めた書があるが、これは元々オペラやミュージカルの台本だったとの説を唱えたい。
ルネサンス期に教会音楽作家パレストリーナが曲をつけて歌ったらしいが、寡聞にして舞台が再現されたとの話は聞かない。
舞台設定などが失われており、セリフだけが残ったため分かりにくいが、全体の物語を把握すれば舞台として再現できそうである。
全体の物語としては、『竹取物語』や中国『孟姜女』のように、帝王からの求婚を美しい小娘が拒絶する、反権力のお話である。
これを、ソロモンが女達を口説いた恋愛歌などと説明すると、物語が見えてこないばかりか、文学的価値も半減してしまう。
つまり『万葉集』のように脈絡なく恋歌を集めたものではなく、舞台歌劇であったからには四つの幕から成っていたと想定する。
登場人物は、シェラミの娘とソロモン王で、男女の掛け合いで歌われるが、バック・コーラスではエルサレムの娘たちも歌う。
1幕:王は道端で拉致した娘の身体的な美しさを誉め、後宮に入るよう口説くが、娘は元彼への愛情を歌って王を興ざめさせる。
2幕:次に、王は宮殿や財宝などで娘の気を引こうとするが、娘は元彼と草原で星を見ながらロマンチックに過ごした夜を歌う。
3幕:娘は「私は野のユリである」との有名な言葉で、後宮での自由がない生活や、多数の妻を持つソロモンを婉曲に批判する。
4幕:娘は王の求婚を拒絶して、元彼である羊飼いとの愛を貫き去っていくが、王は未練たらしく「帰ってこいよ~」と虚しく叫ぶ。
野崎晃市(47)