
「消費増税」ではない。「消費税増税」と言うべきだ。
[斎藤貴男「二極化・格差社会の真相」] 現下の消費税増税はイコール全国の零細事業者や自営業主に対する
死刑宣告だからだ。
「日々担々」資料ブログ 日刊ゲンダイ2013/07/30 掲載
安倍晋三政権は来年4月に予定している消費税増税の可否を、10月の臨時国会の召集前に判断する方針を固めたようだ。菅義偉官房長官が28日に放映されたフジテレビの番組で明らかにした。
さっさと決めない慎重ぶりっ子に、大手のマスコミは苛立ちを隠さない。相変わらず財務省や財界のパシリである。なお政権内でも麻生太郎財務相はこちらの派。「増税は国際公約」なのだとか。
こうなると安倍首相がまともに見えてしまう。それはそうだ。現下の消費税増税はイコール全国の零細事業者や
自営業主に対する死刑宣告だからだ。
殺される人々の商圏は大企業が食うので、GDPや日銀短観の景気指標には反映されにくいだろうが、失業者があふれ自殺者が列をなすとわかりきっている以上、仮にも政権を担う人間が少しはためらわないようでは、完全に狂っている証明ではないか。
断じて極論ではないので念のため。そう思われた読者には、消費税という税制がどれほどの嘘と弱い者イジメで成り立っているのかを理解してほしいと、心の底から願う。
詳細は拙著「消費税のカラクリ」(講談社現代新書)や湖東京至氏との共著「税が悪魔になるとき」(新日本出版社)等を参照されたい。ここでは一点だけ。
「消費増税」と表現したがるマスコミや有識者は信用すべきでない。「消費税増税」が正しい。
なぜなら消費税は、原則あらゆる商品やサービスのすべての流通段階で課せられる。しかも「納税義務者」は年商1000万円以上の事業者と定められているのに、実際に税金分を負担する「担税者」の規定がない。個々の取引において、どちらが払うか。その規定がなく、弱い側がより多くの負担を強いられる、悪魔のシステムなのだ。
しかし、「消費増税」だと、むしろ小売りの現場だけで課税されるような印象になる。消費者だけが負担しているように見せる効果さえ果たしてしまう。
そう、かねて財務省とマスコミが国民を欺いてきた大嘘を、この期に及んでより徹底する役割を帯びたミスリーディング・タームになっているのだ。
実は筆者自身も、数年前までは頓着していなかった。深く反省しているが、とすれば「消費増税」を多用する者の全部が全部、承知の上で印象操作に加担しているとも限らない。ホントに何もわからないだけなのかも。
何度でも書く。消費税はとことん卑しく汚らしい税制だ。
それにどうせ安倍政権は、税収が増えても大企業の法人税減税と土建屋利権に費消するだけ。
普通の国民には何一つよいことなどない。
◇さいとう・たかお 1958年生まれ。早大卒。イギリス・バーミンガム大学で修士号(国際学MA)取得。日本工業新聞、プレジデント、週刊文春の記者などを経てフリーに。「東京電力研究 排除の系譜」「消費税のカラクリ」など著書多数。