林徽因伝(5)タゴールとの出会い

梁思成、タゴール、林徽因
林徽因と梁思成が米国留学に出かける半年前の1924年4月に、インドの詩人でノーベル賞を受賞したタゴールが中国を訪れた。
タゴールは蔡元培や梁啓超といった中国の知識人たちの出迎えを受け、英語が達者な徐志摩と林徽因が通訳に当たった。
タゴールは徐志摩と林徽因の親密な関係に気が付いたが、林徽因はすでの梁思成と婚約しており、いわば三角関係のような状態だった。
5月8日にタゴールの64歳の誕生日を祝うため林長民らは英語の舞台劇「チトラ」を上演し、林徽因が主役のチトラ姫を熱演した。
この劇には魯迅や梅蘭芳などの知識人も観客として訪れ、林徽因はこれを機に梅蘭芳と知り合い京劇に興味を持つようになる。
タゴールと徐志摩の交友は後々まで続き、タゴールの詩風は林徽因や徐志摩ら中国ロマン派の詩人たちに大きな影響を与えた。
以下は林徽因の詩「黄昏過泰山」である
「黄昏に泰山を過ぐ」
あの日を覚えているわ
心は一本の長い川のように
黄昏を迎え入れたの
月のかけらが胸に掛かっていたわ
まるでこの青黒い山のように
心は孤高な壁の一面よ
生い茂る緑
忘れられない夜のかすみ
果てしない広漠
足下から風の音が聞こえて
夜がやって来たわ
野崎晃市(43)